ガモウ関西 映画通、なっかんコラムVol.9

2019.07.10 Wednesday

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    ラース・フォン・トリアー

     

    先日、ラース・フォン・トリアー監督の最新作、「ハウス・ジャック・ビルト」が公開されました。1970年代アメリカを舞台に、高度な知性を持つ連続殺人鬼の視点から描いた物語です。昨年のカンヌ映画祭に7年ぶりに出品したこの作品は、その過激な内容から途中退場者が続出しました。しかし、最後まで観た観客からはスタンディングオベーションが起こるという、正に賛否両論となる作品です。日本では18禁の作品となりますので、内容の過激さが想像つくと思います。

     

    この作品は、カンヌ映画祭に7年ぶりに出品されたのですが、ラース・フォン・トリアー監督はこの7年間作品を撮っていなかった訳ではありません。実は7年前のカンヌ映画祭において、ヒトラーの擁護発言をしたという事でカンヌ映画祭を追放されたのです。そして復帰してきた作品が過激な問題作というまさに破天荒で、悪名高い監督です。

     ラース・フォン・トリアー監督はデンマークの監督です。1995年、彼を中心としたデンマークの映画作家達が「ドグマ95 」という映画運動を起こしました。ドグマ95には「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個のルールがあります。それは、撮影はすべてロケーション撮影でスタジオのセット撮影を禁ずる事や、カメラは必ず手持ち、カラーの作品で、照明は禁止、今、ここで起こっている事しか描いてはいけない(回想シーンの禁止)などです。当時、この運動で撮られた作品は、日本で公開された時にもドグマ95作品と紹介されていました。ラース・フォン・トリアー監督は1998年に「ドグマ95」の作品として「イディオッツ」を発表します。この作品は知的障害者のふりをし、社会の偏見や偽善を暴くグループを描いた作品で、その内容から物議を醸した作品です。しかし、「ドグマ95」として撮られた作品はこの1本だけです。

    彼の代表作といえば、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」です。この作品は2000年に制作され、2000年のカンヌ映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞しています。主演は歌手のビョークで、この作品で主演女優賞を獲得。この作品の主題歌はゴールデングローブ賞および、アカデミー賞の歌曲部門にノミネートされ、高く評価されました。この作品はミュージカル映画になりますが、内容は重い内容です。主人公は、先天性の目の病気の為、失明する運命にあり、徐々に視力も低下していきます。彼女の息子も遺伝によりこの疾患を持っており、13歳までに手術をしなければ将来失明してしまいます。彼女は息子の為に、工場で昼夜問わず働きます。しかし、目はほとんど見えなくなり、仕事にも支障をきたす様になっていき…といったストーリーです。観終わった後、しばらく放心状態になります。いい意味でも、悪い意味でも…

    2003年制作の「ドッグ・ヴィル」では床に白線を引いて説明がかかれただけのスタジオを、村とみなして撮影された実験的な作品です。どちらかというと、舞台に近い作品ですが、壁のない白線だけで作られた村は、常にカメラに映っていて気が抜けない撮影と、それに加えてショッキングな内容の為、演者も相当のストレスがかかったそうです。内容は割愛しますが、この作品もかなりヤバいです。というか、この監督の作品でヤバくない作品はないと言っても過言ではありません。

     

    彼の作品では、人の心の奥にある醜さや残酷さを表している作品が多い為、作品の評価は賛否両論に分かれる事が多いです。途中退出者続出とか、観ていて失神者が出たとか、そういう話題が多いのもこの監督作品の特徴です。観ていて心地よい作品はほとんどなく、いつも観た後には大抵、衝撃を受けて気持ちが沈む作品ばかりです。

    「なんで、この監督の作品は精神的にしんどいもんばっかりやってわかってんのに観るねん!」とお思いの方もいると思います。

    それはごもっともな意見です。

    例えるとするなら、激辛好きが食べる激辛料理みたいなものです。食べたら辛過ぎて胃や口が痛くてお腹の調子も悪くなるってわかっているのに食べてしまう。でもまた食べたくなる。それに近い感覚です。

    後味が悪く、落ち込んでいる時に観てはいけないという通称「鬱映画」。「鬱映画」で検索するとラース・フォン・トリアー監督作品は必ず紹介されています。そんな作品を大手を振ってオススメはできませんが、こっそり、やんわり推しておきます。観終わって気分が落ちても、なっかんのせいにしないでくださいねー

     

    ご清聴ありがとうございました!

     

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